1998 年 20 巻 7 号 p. 574-580
1997年10月より1998年4月までに全国6施設において登録された手術不可能な悪性腫瘍による高度気道狭窄20例に気管支鏡(硬性8例, 軟性12例)にてX線透視を併用して計35個のUltraflex nitionol stentを留置した。ステント留置前後で, 内視鏡的・画像的に気道狭窄度を経時的に測定した。気道狭窄度はステント留置前87%, 留置直後19%, 30日後21%と留置前に比較してともに有意(p<0.001)に再開存を認めた。ステント留置直後より90%の症例に呼吸困難の改善を認めた。呼吸困難度(Dyspnea Index)は留置前に比較して留置直後, 30日後ともに有意(p<0.001)に改善を認めた。ステント関連の合併症はメッシュ間隙よりの腫瘍の突出・増殖(20%)と誤留置(15%)は認めたが, 気道分泌物貯留やステントの移動は問題にならなかった。メッシュ間の腫瘍突出の際はNd-YAGレーザー焼灼や機械的切除を要した。誤留置の際に位置調節・抜去は可能であった。今回の多施設臨床的評価ではUltraflex stentは形状記憶合金nitinolのワイヤーメッシュがフレキシブルでしかもアクティブに拡張するので生体適合性に優れ, 複雑な気道狭窄に対してもこの留置により有意に気道開存・呼吸困難の改善を認め, しかも合併症が少なく, 有用で安全と考えられた。