1998 年 20 巻 7 号 p. 590-594
症例は43歳, 男性。2年前より検診で胸部X線写真の異常を指摘されていたが, 自覚症状なく放置, その後精査希望にて当科を受診。職業歴は, トラックの運転手を経て, 4年前よりビール工場製造過程に従事。初診時, 画像所見にて両側上葉優位に多発微小粒状影を認めるほか, 血液一般, 尿検査, 気管支肺胞洗浄液, 血液ガス分析, 肺機能, いずれも異常を認めなかった。禁煙, 無治療にて病変の進行を認めたため入院し, 胸腔鏡下肺生検を施行した。病理組織標本では一部線維化像を認めるも確定診断にいたらなかった。同部位に分析電子顕微鏡を施行し, 元素分析スペクトルにて, シリカ, アルミニウムの優位な検出を認めた。患者は4年間ビール製造工場でビールの濾過用珪藻土を扱っていること, および生検結果より, 本症例を珪藻土塵肺と確定診断した。就業4年と比較的短期間での発症, またビール製造過程環境での発症など比較的稀な症例と考えられた。