気管支学
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高度の血管破綻を示した菌球型・肺アスペルギルス症の 1 手術治験例 : 病理組織像を中心に
野村 友清平井 三郎石原 照夫沢崎 博次斎木 茂樹
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1998 年 20 巻 7 号 p. 595-599

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抄録

症例は53歳の男性。肺腺癌のため右下葉切除施行(P-T1N0M0)8年後多量の喀血を訴え, 胸部X線写真にて右上葉にfungus ballの出現を見た。喀血制御を目的に, 右上中葉切除を行った。病理組織学的検索にて, 上葉に数個の空洞が見られ, S^2の空洞は通常の菌球型肺アスペルギルス症(以下肺ア症)の像を示したが, S^3aの2個の空洞は血液凝塊で満たされ, 空洞壁内に動脈壁の破綻およびそこからの出血が見られた。空洞壁の周囲には肉芽組織を認め, その肉芽組織内には小血管からの出血が見られ, 出血巣に少数のアスペルギルス菌(以下ア菌)を認めた。胸膜は全面的に肥厚し, 多くの個所で小血管壁の破綻, 出血, ア菌集落を認めた。また肺動脈内に多数, そして肺静脈にも少数のア菌が見られた。本症例の特徴的な病理所見は, 最近重視されているア菌産生のhemolysinや蛋白分解酵素の作用による血管壁の破壊, ア菌の組織内侵入を強く示唆する所見と考えられた。

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© 1998 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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