気管支学
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気管支・肺血管の先天的形成不全例に対する3次元CT画像の有用性の検討
河野 修三雨宮 隆太朝戸 裕二清嶋 護之田中 良太保科 克行吉見 富洋塩山 靖和木村 誠志白日 高歩
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2000 年 22 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

呼吸器の形成不全例にラセンCTで撮影した情報を3次元画像に再構成し, その有用性について従来の画像診断法と比較検討した。対象は1992年から98年3月に当院で3次元画像を作成した先天的な気管支・肺血管の形成不全9例11病変である。全例が高速ラセンCT軸位断像で形成不全を指摘できた。ただし, 3次元画像では軸位断像の情報に加え新たに次にあげる有用な異常所見を得る事ができた。肺動静脈瘻(3例)では短絡部流出入血管の形態, 位置の立体的な把握が可能となった。肺静脈部分環流異常(2例)では1例で左上肺静脈から左腕頭静脈への環流部位を直接証明しえた。他の1例は右中葉静脈が下肺静脈へ流入していた。肺分画症(1例)では大動脈からの異常動脈と分画肺から右下肺静脈のV^<10>下方へ環流する静脈を識別でき, 術前診断に有用であった。多脾症候群(1例)では左側下大静脈に左肺型気管支・血管分岐など複雑な異常を示し, 心臓の形成異常も含め3次元画像で初めて全体像が認識可能であった。気管・気管支分岐異常(4例)では, 1例がB^1転位気管支, 1例が気管から分岐する過剰気管支, 1例が副心臓枝と診断された。他の1例(多脾症候群)は左右肺共に左型の気管支分岐形態を示していた。通常の画像診断法では全体像を把握する事が困難な気管支・肺血管の形成不全例に対し, 3次元画像を再構成する事で総合的な立体的情報を得る事が可能となった。特に, 血管形成不全例では静脈系の描出に優れていた。これらの経験から呼吸器系の形成不全例は高速ラセンCTから再構成した3次元画像こそが, 第1に選択すべき最も安価で安全な診断法と考えられた。

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© 2000 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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