抄録
結核に関連した胸水貯留症例について胸腔鏡検査の意義を臨床的に検討した。胸腔鏡検査を施工した胸水貯留症例で, 結核性病変と病理組織学的検索によって診断された9例を対象とし, 従来の臨床的諸検査と胸腔鏡検査所見を検討した。結核性胸膜炎7例では, 全例臨床的に結核性胸膜炎が疑われた。胸腔鏡検査所見では, 全例にびまん性白色小隆起性病変が認められ, 生検で結核と診断された。結核性膿胸2例では臨床的に膿胸所見を認めたが, 原因菌は不明であった。胸腔鏡検査でも多房性線維素膿性期, 膿性被膜所見を認め, 胸膜炎症例でみられた白色小隆起性病変は認められなかった。これらに対して手術を施行し, その摘出標本の病理組織学的検索によって結核と診断された。結核性胸膜炎ではびまん性白色小隆起性病変という特徴的な胸腔鏡所見が認められたが, 症状が進行して膿胸となったものではそれらの所見が不明瞭であった。以上から, 胸腔鏡検査は結核性胸膜炎の診断に有用であるが, 膿胸に移行したものに対しては, その有用性が減少すると思われた。