抄録
背景.気管支腔内超音波断層法(Endobronchial Ultrasonography: EBUS)は,気管支鏡を介し気管気管支内腔に細径超音波プローブを挿入し,気管気管支壁,気管支周囲組織の超音波断層像を得る検査である.EBUSによる深達度診断の有用性と限界を知るため,術前のEBUSによる深達度診断と病理所見からの深達度診断を比較検討した.方法.気管支腫瘍の患者に対して,術前にEBUSを行い,静止画,動画を記録しておく.術後,摘出標本の気管支病変の部分を,気管支の短軸像を得るように切り出し比較した.結果.37病変の内,32病変で深達度は一致していた(正診率86%).一致しなかった5病変の内,3病変のcarcinoma in situ以外は,腫瘍直下の軟骨外縁と外膜の間に存在するリンパ球浸潤を腫瘍浸潤と過大評価した1例と,外膜への圧排を腫瘍浸潤と過大評価した1例を認めた.考察.病変の厚さの薄いcarcinoma in situは第1層の境界エコーに隠れてしまい,20 MHzでは描出できない.しかし,反面,20MHzで描出できないものは,carcinoma in situか上皮下組織の浅い部位に浸潤しているのみと判断できる.今後の課題として,リンパ球浸潤と腫瘍浸潤の鑑別が超音波画像でできるかどうか,リンパ球浸潤を持つ腫瘍の特徴はどんなものか,明らかにしたい.