気管支学
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Liquid biopsyによるCOPDの診断(<ミニ特集>「気管支肺胞洗浄による"Liquid biopsy"の臨床的意義」)
別役 智子
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2004 年 26 巻 1 号 p. 22-27

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抄録

気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage: BAL)は肺の末梢気道,肺胞の細胞,気道被覆液成分を直接的に回収し,病理組織的手段では不可能な炎症細胞,メディエーター,サイトカインなどの肺局所における情報を得ることができる.しかし,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)は,気道の虚脱,閉塞という生理的特徴から,BAL施行に際しその回収率が低くなることが多く,その適応には限界がある.筆者らは,中高年喫煙者を対象にBALを行い,洗浄液中の各種プロテアーゼやサイトカインを測定し,胸部高分解能CT上の肺気腫病変の有無により分類した2群間で,どのような因子に差があるかを検討してきた.早期肺気腫病変には,好中球の潜在的な活性化や集積が関与していることを示唆する結果を得た.近年,石坂らにより,bronchoscopic microsampling(BMS)法が開発された.我々は,BMS法を臨床的に安定期にある進行したCOPD患者に施行しその安全性を確認した.さらに,COPDの気道病態における好中球の役割に注目し,気管分岐部と下葉の3〜4次分岐の2カ所について気道被覆液(airway epithelial lining fluid: ELF)を採取することにより,気道の部位特異的な気道炎症を評価することが可能であった.BALおよびBMS法が,COPDの現時点での診断における役割は小さい一方で,得られる生化学的,分子生物学的情報は,COPDの病態解明において不可欠である.今後,COPDにおける気道の病態生理の解明,治療効果判定等へ,本法の応用が期待される.

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© 2004 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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