気管支学
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術前診断未確定肺野小型病変(径20mm以下)に対する胸腔鏡診断および治療の有用性に関する検討(第27回日本呼吸器内視鏡学会総会 : シンポジウム2-4)
松本 勲小田 誠常塚 宣男田村 昌也滝沢 昌也谷内 毅川上 和之太田 安彦渡邊 剛
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2004 年 26 巻 8 号 p. 730-734

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抄録

背景. 近年, 肺野小型病変が発見される機会が増加している. 微小な病変や胸部CT写真上すりガラス陰影を呈する病変の確定診断は内科的検査では困難で, 胸腔鏡手術が有用である. また, 最近, 末梢小型肺癌に対して積極的縮小手術の試みがなされている. 目的. 術前診断未確定の径20mm以下の肺野小型病変に対する胸腔鏡による診断および治療について検討した. 対象. 2000年1月から2004年1月に確定診断が付かず, 当科で胸腔鏡:下手術を行った最大径20mm以下の肺野末梢小型腫瘤の154例. 原則として術前に, CTガイド下に糸付きフックワイヤーを使用し腫瘍部のマーキングを施行した. 胸腔鏡下に肺部分切除または区域切除を行い, 術中迅速病理診断を行った. 末梢小型肺癌に対しては術前に同意を得た症例に積極的縮小手術を施行した. 結果. CTガイド下マーキングを施行した149例中, 45例で軽度の気胸を生じたが, 胸腔ドレナージを要するものはなく, 重篤な合併症はなかった. 病理診断は悪性121例, 異型腺腫様過形成7例, 良性26例. 全例で確定診断を得ることができ, 生検での切除断端の病変遺残はなかった. 原発性肺癌117例中36例(30%)に対して積極的縮小手術を行った. 組織型は腺癌34例, 扁平上皮癌2例で, 病理病期はIA期34例, IIA期1例, IIIA期1例であった. 積極的縮小手術症例の予後は全例1〜51か月生存中で局所再発および遠隔転移はない. 結語. CTガイド下マーキング後の胸腔鏡下肺生検は重篤な合併症はなく, 確定診断が確実で有用な生検法であった. 肺野末梢小型肺癌に対する積極的縮小手術は, 慎重な症例選択の下に行うことにより, 患者のQOLを保ちながら良い予後を得ることができた. ただし, 局所再発の可能性があり, 患者に十分説明した上で慎重に行った. また, 術式の決定は術中病理診断を根拠としたが, 腺癌の術中迅速病理診断は過大評価される傾向にある一方, 過小評価される場合もあり慎重を要する.

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© 2004 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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