1981 年 3 巻 2 号 p. 123-143
1972年、Longらによって新たに開発されたPerfluoroctyl Bromide(以下PFB)の気管支ならびに肺胞造影剤としての特性を基礎的および臨床的に検討した。気管支造影剤としてのPFB乳剤はDionosilに比較して造影力がやや劣るが、末梢気管支領域での注入造影剤の消失時間は短縮を示した。一方、PFB(原液)による肺胞造影では、Dionosil肺胞造影に比較し、体位変換のみで目的とする肺胞領域を造影することが可能であった。しかも異常肺胞に混在する正常肺胞を同時、かつ容易に描出し、肺胞病変の肺内分布を定量的に評価する上でも有意義であることをみとめた。また本剤が気化によっても呼気ガス中に排泄され、短時間内に肺胞領域から消失すること、実験動物での造影後の病理変化もほぼ1ヶ月で消失することを認めた。特記すべき副作用もみられないことから、本剤は気管支ならび肺胞造影剤、とくに後者において臨床的価値を有するものと考える。