1981 年 3 巻 2 号 p. 170-183
気管支ファイバースコープを使用する気管・気管支のendoscopic surgeryは1980年にNd-YAGレーザーが導入されてから手技が一変した。それまでのendoscopoc surgeryは高周波電気メスと鉗子切除により細々と行なわれていたにすぎない。endoscopic Nd-YAG laser surgeryは気管から区域気管支までの気道を閑塞、狭窄する肺癌、転移性肺癌、良性腫瘍、結核及び外傷性肉芽腫などをvaporizationするのに非常に有効である。通常Nd-YAGレーザーを連続波40Wで照射することにより、照射部分に組織内蛋白質の熱性凝固変性が起こる。このため照射面に壊死物質が付着し、気道を再狭窄することがある。腫瘍にNd-YAGレーザーを照射すると遅発性の腫瘍退縮現象が見られ、1∿2週後に何ら処置を加えることなく腫瘍塊はより小さく退縮する。気管・気管支壁内の軟骨は熱伝導の妨げとなり通常の照射では軟骨レベルより外側部の腫瘍は熱変性が起こりにくい。Nd-YAGレーザー断続波(pulse幅0.5 sec.)で照射すると同大の腫瘍塊を連続波でvaporizationするのに要する時間の2∿3倍を費やす。しかし断続波の照射は照射面に対する熱伝導が乏しく、壊死物質の付着が見られないので、細部の追加照射に応用される。endoscopic Nd-YAG laser surgeryは手術不能例では気道を確保することによりperformance statusの改善を計ることができるので、適切な化学療法や放射線療法の施行を可能にする。手術例では術前に本法で気道を開通させ、合併する肺の炎症を改善させ得るので、術後管理が容易となる。