2008 年 30 巻 1 号 p. 5-12
背景と目的.中皮腫の病期診断において胸腔鏡は必須の検査である.しかしながら,早期中皮腫症例の一部は顆粒状腫瘍であり通常の胸腔鏡検査のみでは同定が困難な場合がある.胸腔鏡検査に蛍光観察(Autofluorescence imaging, AFI)及び狭帯域観察(Narrow band imaging, NBI)といった特殊光観察を用いることで,悪性中皮腫の早期診断への有用性について検討した.対象と方法.対象は2006年1月から5月の5ヶ月間で,画像や胸水所見から中皮腫を疑い診断目的で胸腔鏡を施行した12例.胸水貯留が著明であった7症例には局所麻酔下胸腔鏡を,少量胸水や胸膜の癒着が疑われた5症例には胸腔鏡下手術(VATS)を施行した.AFIはオリンパス社の専用スコープ(BF-F260),NBIは同社のLTF-240を使用した.結果.12例中7例で胸膜生検より悪性中皮腫との診断が得られた.中皮腫症例のAFI所見では病変部は自家蛍光が減弱しマゼンタとなった.NBIでは腫瘍部分は白く強調され胸膜表面の凹凸が明瞭化し,腫瘍内部には太い血管が散在する像が得られた.考察.胸腔鏡検査に特殊光観察を用いることにより胸膜面の腫瘍の局在の特定においての有用性が示唆され,中皮腫の早期発見や病期診断の手段として活用されることが期待される.