気管支学
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Pericardial fat pad(傍心膜脂肪組織)による吻合部被覆が有用であった気管支形成術後縫合不全の1例
片岡 和彦藤原 俊哉岩本 康男住吉 秀隆松浦 求樹妹尾 紀具
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2009 年 31 巻 2 号 p. 89-94

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抄録

背景.気管支形成術後の縫合不全は,致命的となりうる合併症である.症例.69歳男性.右上葉肺癌にて開胸し,#11sリンパ節転移を認めたために右上葉管状切除術を施行した.Pericardial fat pad(傍心膜脂肪組織)を有茎で剥離し,吻合部の全周に被覆した.切除肺の病理学的検索では混合型小細胞癌(combined small cell carcinoma)と診断された.術後は合併症なく,軽快退院した.化学療法目的で再入院した時,発熱とCRPの上昇を認め,気管支鏡検査にて吻合部の部分的な離開を認めた.CTでは吻合部の右側に25×17mm大の死腔を認めたが,その周囲にpericardial fat padが存在し,気胸も膿胸も合併していなかった.抗生剤の投与のみで軽快退院した.術後10か月のCTでは,吻合部周囲の死腔は完全に消失し,吻合部狭窄も認めなかった.患者は術後7か月目に再発をきたし,抗癌剤を投与するも,術後19か月で癌死した.結論.気管支形成術の吻合部にpericardial fat padを被覆することにより,縫合不全が重篤な状態に至らずに軽快したと考えられた.

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© 2009 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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