2009 年 31 巻 5 号 p. 288-292
背景.肺ランゲルハンス細胞組織球症(pulmonary Langerhans cell histiocytosis;肺LCH)はランゲルハンス細胞の非腫瘍性増殖と肉芽腫形成を特徴とする,比較的まれな原因不明の疾患である.本邦では100例余り報告されており,喫煙の関与が強く示唆されている.症例.51歳,男性.喫煙歴;30本/day×30年.糖尿病にて他院通院中.2007年秋の人間ドックにて胸部異常陰影を指摘され当院を受診された.胸部CTにて,小葉中心性の淡い小粒状影を認めたため,気管支鏡検査を施行し,右B^2より経気管支肺生検(TBLB),右B^3_bより気管支肺胞洗浄(BAL)を行った.病理組織所見はCD1aおよびS-100蛋白陽性の組織球の小集簇を認め,BAL液の細胞分類にてCD1a陽性細胞が5.6%であった.以上より肺LCHと診断した.6週間禁煙後の胸部CTにて大部分の陰影は消退した.結語.気管支鏡検査による肺LCHの診断率は低いとされているが,BAL,TBLBにて診断し禁煙にて短期間に寛解した,比較的早期病変と考えられた肺LCHの1例を経験したので報告する.