気管支学
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長径10cm大の腫瘍片を喀出した多形癌の1切除例
大畑 賀央中原 理恵笠井 尚神山 由香理五十嵐 誠治森 清志児玉 哲郎
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2012 年 34 巻 1 号 p. 80-84

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抄録

背景.腫瘍片の喀出という稀な経過をたどった多形癌の1切除例を経験したので報告する.症例.71歳,男性.血痰を主訴に近医を受診,精査加療目的に当院紹介となった.胸部CT検査では右下葉に結節影を認め,この一部が下葉気管支内に進展していた.気管支鏡検査では右下葉支入口部にポリープ状の腫瘍を認め,病理組織検査にて多形癌の疑いと診断された.心臓精査終了後に気管支鏡検査を再度施行したところ,腫瘍先端はポリープ状に気管内にまで進展しており,中間気管支幹は腫瘍で充満している状態ではあったが粘膜面への明らかな浸潤は認めなかった.分離肺換気用チューブ挿入時に気管内に存在する腫瘍先端部を損傷する可能性があると判断し,腫瘍先端部のみにエタノールの局所注入を施行した.局注後5日目に長径10cmの円柱状の腫瘍片を喀出,その後に右中下葉切除術を行い,病理病期IIA期(pT2bN0M0)の肺多形癌と診断した.結論.多形癌においてポリープ状発育をきたすものは稀とされている.本症例は気管内に伸びたポリープ状の腫瘍先端が分離肺換気用チューブ挿入にて損傷を受ける可能性が危惧され,エタノールの局所注入を施行したが,根治手術前に腫瘍片が喀出された.

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© 2012 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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