気管支学
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局所麻酔下胸腔鏡を行った悪性胸膜中皮腫症例14例の検討
古賀 祐一郎富永 正樹眞田 宏樹澤本 良子日高 大肥山 淳一郎
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2013 年 35 巻 6 号 p. 593-599

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抄録

背景.近年,本邦での悪性胸膜中皮腫の罹患率が増加しており,今後20〜30年間は増加を続けるものと推測される.中皮腫はびまん性の胸膜肥厚や血性胸水を認める症例で疑われるが,胸水細胞診のみでの診断率は高くない.目的.胸膜中皮腫の診断における胸腔鏡検査や画像検査,生化学的検査の有用性について検討する.方法. 2004年6月から2011年7月までに,当院で悪性胸膜中皮腫と診断した症例のうち局所麻酔下胸腔鏡を施行した14例について,その臨床像や検査所見・胸腔鏡所見についてレトロスペクティブに比較・検討を行った.結果.中皮腫の主因と考えられているアスベスト曝露に関して,問診により曝露歴を確認できたのは14例中7例(50%)であった.胸部CTで,アスベスト曝露歴を示唆する胸膜プラークを指摘できたのは14例中3例(21%)のみであった.対して,胸腔鏡では13例中9例(69%)で胸膜プラークを証明することができた.胸水中のマーカーとして, CYFRAは7例中6例(86%)で陽性であり,陰性マーカーであるCEAは全例(12例中12例,100%)で陰性であった.胸水細胞診の感度は,上皮型で70%(7例/10例),肉腫型で0%(0例/4例)と上皮型で有意に高かった(χ^2検定;0.018).胸腔鏡所見を上皮型と肉腫型に分けて比較・検討を行ったが,組織型による明らかな違いを指摘することはできなかった.結論.アスベスト曝露歴の聴取や胸膜プラークの存在,胸水中のバイオマーカーなどから中皮腫の存在を疑い,胸腔鏡検査による確定診断を行うことが重要であると考えられた.

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© 2013 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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