2017 年 39 巻 3 号 p. 215-220
背景.原発性気管腫瘍は比較的まれな疾患であるが,気道狭窄に伴う重篤な呼吸不全を来し緊急の対応を要する場合がある.また手術の際には気道確保に工夫を要する.軟性気管支鏡による組織診断と気道確保を行い,二期的に気管管状切除を施行した気管原発腺様囊胞癌の1例を経験したので報告する.症例.40代女性.4か月前から咳嗽と喘鳴,2か月前に労作時呼吸困難が生じた.下部気管をほぼ閉塞する気管腫瘍を指摘され当院紹介.気道確保と診断目的に軟性気管支鏡による腫瘍切除を先行し,症状と呼吸機能の改善が認められた.1か月後に気管管状切除を行い,術中術後に重篤な合併症は起こらなかった.結論.気道狭窄を来す気管腫瘍に対してあらかじめ軟性気管支鏡による腫瘍切除を行うことで,気道が確保され根治手術を安全に行うことができた.