2018 年 40 巻 4 号 p. 357-360
背景.気管乳頭腫は,比較的稀な良性疾患であるが,再発や悪性化の可能性もあり,その診断,治療には慎重を要する.症例.83歳,男性.健康診断で胸部異常影を指摘され,当院へ紹介受診となった.胸部CTでは気管内に約20 mmの結節を認めた.気管支鏡検査では,①声門から6リング末梢側に気管左側壁から突出し気道を70%閉塞する腫瘍,②さらに2リング中枢側の気管右側壁にも約10 mmの結節状の腫瘍を認めた.診断・治療目的に硬性鏡下に腫瘍摘出を施行した.病理診断は気管乳頭腫であった.現在は再発なく外来で経過観察中である.結語.多発性気管乳頭腫に対して硬性気管支鏡下治療を施行した1例を経験した.本症例のように気道狭窄をきたす気管腫瘍に対して,硬性気管支鏡による治療は有用である.気管乳頭腫は再発や悪性化を示すことがあるため,これらに留意した慎重な経過観察が必要である.