気管支学
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原著
5ALAと自家蛍光観察システムを用いた胸膜悪性病変に対する光学的診断法の有用性の検討
北田 正博安田 俊輔阿部 昌宏岡崎 智石橋 佳南 幸範奥村 俊介佐々木 高明山本 泰司大崎 能伸
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2020 年 42 巻 3 号 p. 215-222

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抄録

はじめに.光感受性物質である5ALA(アミノレブリン酸)と自家蛍光を併用した胸膜悪性病変に対する診断法の開発を行った.体外より摂取した5ALAは,ヘムの前駆体であるprotoporphyrin IXに代謝され悪性細胞内に留まり,630 nm程度の赤色蛍光を呈する.5ALAの経口投与後(手術4時間前,20 mg/kg),胸膜悪性病変の観察を行った.対象と方法.2017年1月より2019年4月まで胸膜浸潤が疑われた肺癌82例,転移性肺腫瘍32例,悪性胸膜中皮腫7例,胸腔内良性疾患9例の合計130例に対し本手技を施行した.本研究は前方視的研究として施行した.結果.1)悪性病変では赤色蛍光が認識され,蛍光発色観察可能例は,転移性肺腫瘍で90.6%,悪性胸膜中皮腫で85.7%であった.2)肺癌胸膜浸潤診断は,pl0かpl1以上に対する感度は,肺腺癌に限ると感度93.9%,特異度74.3%,陽性的中率60.8%,陰性的中率96.2%であった.蛍光観察可能なpl0の88.9%が術前PL1と診断した症例であった.3)胸膜播種性病変6例のうち,2例は視認困難な症例であった.結論.胸膜近傍で胸膜浸潤を疑う腫瘍性病変であれば,病変の局在診断が可能である.肺癌では胸膜浸潤陽性例の手術方針を検討すべき診断となる.また,視認困難な胸膜播種診断にも寄与する可能性がある.

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© 2020 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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