2021 年 43 巻 4 号 p. 421-425
背景.超硬合金は,炭化タングステンと約10%のコバルトの合金である.超硬合金肺は,超硬合金を使用または製造する労働者やダイヤモンド研磨者に起こる慢性呼吸器疾患であり,微細粉塵となった超硬合金の吸入が原因である.症例.41歳男性.7年前よりサージカルマスク使用下で超硬合金の研磨作業をしていた.1年前より咳嗽が出現し,健診の胸部X線で両側下肺野の網状影を指摘され,当科紹介受診となった.CTでは両側下葉に微細な粒状影を認め,職業歴と画像所見から超硬合金肺が疑われた.気管支肺胞洗浄・経気管支肺生検の結果,肺胞洗浄液中には多核巨細胞を認め,初期の多核巨細胞を疑う核の集合像を伴う間質性肺炎の組織像を認めた.気管支鏡検体の元素分析の結果,タングステンを確認したことより,超硬合金肺と確定診断した.結論.経気管支肺生検,気管支肺胞洗浄,元素分析で診断した超硬合金肺の1例を経験した.職業歴から超硬合金肺を疑った時は,CTで病変が軽微であっても気管支鏡検査を行っていくべきである.