1985 年 7 巻 4 号 p. 442-449
超微形態像から, 気道・肺胞域各部の被覆上皮系の特異点と肺の表面被覆層・表面活性物質Sfを踏まえた肺のクリアランスは以下のように考えられる。1.気道中枢域は線毛細胞(排泄と一部吸収・分泌), 杯細胞(粘液外分泌, 一部吸収), 神経内分泌細胞(感覚), 中間細胞(未分化型)および基底細胞から成り, また気管支腺を有する。2.気道末梢域は, 未熟な線毛細胞とクララ細胞(外分泌, 脂質代謝?)の2種類であるが, 呼吸細気管枝は壁側面が肺胞様構造に変化してI型・II型肺胞上皮が被いガス交換が開始する。3.肺胞域はI型肺胞上皮(空気-血液関門を形成)とII型肺胞上皮(Sf分泌とI型の予備)で構成され全表面はSf膜で被覆される。4.気道液は, 分泌細胞と気管支腺の分布のため中枢域にやや多いが, 末梢域や肺胞域では極く少ない。5.気道・肺胞の全含気性領域を被覆するSf膜は, 気・液相界面を形成し細胞環境の保護その他とともに肺の防御機構の第一線を担う。6.Sf膜を含む表面被覆層は, II型肺胞上皮のSf持続分泌とその拡散能, 中枢域の線毛運動による間接的引き上げ, その他の共同でエスカレーター様に気道中枢域に運搬され気道アクアランスの第一段階が保持される。