1986 年 8 巻 1 号 p. 108-113
成因が異なると思われた気管支結石症の3例を報告した。症例1は48歳男で8年前から咳嗽発作が出現し, 以後肺炎を反復罹患している。今回, 血痰を主訴として受診した。胸部X線写真では右中葉無気肺と両側肺門リンパ節の石灰化があり, 気管支鏡では右中葉支口に結石を認め, 鉗子で摘出した。成因は石灰化リンパ節の気管支腔内への穿破によると思われた。症例2は39歳女で胸部異常陰影を指摘され受診した。胸部X線写真では左荒無肺と左主気管支の著しい狭窄を認めた。気管支鏡では左主気管支入口部は白苔で被われ, 中から突出する枯枝状結石を認め, 鉗子で摘出した。成因は狭窄気管支内の貯留粘液の石灰化によると思われた。症例3は70歳男で血痰を主訴として受診した。胸部X線写真には異常なく, 気管支鏡で気管分岐部の約10cm上方で気管軟骨輪上に白色隆起を認めた。鉗子で保持したが可動性は全くなく, 摘出を断念した。成因は気管軟骨の化骨によると思われた。