抄録
気管支ファイバースコピー検査中における局麻剤リドカインの血中濃度を, 肝障害を合併した肺疾患例10例(39検体)A群と, 肝障害を合併しない肺疾患例10例(39検体)B群で測定し比較検討した。血中濃度測定はリドカイン投与開始後20分, 40分, 60分, 120分の4点で行った。リドカインの平均投与量は, A・B両群間で有意差はなかった。各々の症例の血中リドカイン濃度曲線を見ると, 曲線は投与開始後40分までは, すべての例で上昇し, 40∿60分ではA群で平坦型を, B群では下降型を示す傾向にあった。60∿120分では, A・B両群間でその下降程度に差はなかった。血中濃度曲線と血液生化学的検査値との相関では, A群中40∿60分における濃度曲線が上昇あるいは平坦型を示した例で, 肝酵素値の異常高値に加え, γ-グロブリン, コリンエステラーゼ, I.C.G値などの異常値を示すものが多かった。肝障害を合併した肺疾患患者では, リドカイン投与後40∿60分で血中濃度が高値を持続する傾向があるので, 術前の血液生化学的検査値を充分把握した上で, この時期のリドカイン中毒に注意して検査をすすめる必要がある。