日本緑化工学会誌
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論文
北海道石狩海岸における車両の走行が植生と土壌に及ぼす影響
佐々木 真二郎近藤 哲也松島 肇
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2002 年 28 巻 2 号 p. 342-352

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抄録

近年, 砂浜海岸において車両走行による植生破壊が問題となっている。北海道石狩海岸の砂丘上にある車両の進入を規制して9年が経過した地区で, 車両走行により裸地化していた撹乱区と撹乱を受けていない対照区を設け, 植生と土壌環境を比較することで車両走行の影響を把握した。海側のハマニンニク群落では植生がほぼ回復しており, その理由は地下茎繁殖を行う種が多いために植生の回復が早かったと考えられた。しかし, ハマニンニク群落でも汀線に近い場所以外では土壌が硬化しており走行の影響が認められた。汀線に近い場所で土壌への影響が見られなかった理由として, 汀線付近の砂は粒径が大きいため土壌の硬化が起こりにくいこと, 砂の堆積により走行の影響が蓄積されにくいことが推測された。ハマニンニク群落よりも陸側に位置するハマナス群落では, 走行によって植生の成帯構造が破壊されており, 撹乱区には外来種をはじめとする対照区には出現しない種の侵入が見られた。また土壌の硬化は表層から地下50 cmまで認められた。砂の堆積がほとんどないハマナス群落では, 土壌への走行の影響は長期間残留するものと考えられ, 本来の植生へ回復しない可能性も考えられた。

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© 2002 日本緑化工学会
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