日本緑化工学会誌
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荒廃地におけるクロマツの初期成長に対する屑繭の施用効果
邑瀬 章文米林 甲陽
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2002 年 28 巻 2 号 p. 353-357

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抄録

荒廃地におけるクロマツ (Pinus thunbergii) の初期成長に対する屑繭の施用効果について検討した。屑繭は絹糸加工時に発生する副産物であり, 窒素含量が高い (約13%) が, 主成分である絹タンパク質の高い結晶性のために水に不溶性であり, 土壌中における分解速度が緩慢である。粉砕花崗岩を植栽基盤としたワラ積苗工施工時 (1998年11月13日) に, 基肥として屑繭 (窒素約65 g/本相当) を施用し, 4カ月後にクロマツの苗木 (樹高約30 cm) を0.8 m間隔に植え付けた。植栽26カ月後 (2001年5月16日) の屑繭施用区におけるクロマツの成長量 (幹周り) は, 現場慣行の化成肥料区と比べて32%増加した。化成肥料区における無機態窒素濃度は, 試験期間を通じて3.5 mg kg-1以下の低い値であったが, 屑繭施用区においては冬期を除いて8.7 mg kg-1以上の値を示し, 肥効が持続した。施用30カ月後 (植栽26カ月後) においても未分解の屑繭が残存しており, 屑繭中に侵入したクロマツの根が観察された。以上のことから, 植栽前の基肥として屑繭を利用することにより, 一度に数年分の窒素を濃度障害なしに施用することが可能であると考えられる。

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© 2002 日本緑化工学会
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