2003 年 28 巻 3 号 p. 451-455
都心部にある団地建替に伴い屋上ビオトープが整備された“アーベインビオ川崎”1号棟において, その人工地盤上緑化地への侵入植物を調査した。竣工後1年目として計171種が確認され, そのほとんどが草本類であり, 木本類は14種のみに止まった。土壌水分は, 2階部の約50%に対し, 3階部が20~30%と半分程度であった。主に黒ボク土からなる2階部では一年草(49%)と多年草(44%)が近い種数割合を示したのに対し, 主に人工土壌からなる3階部では一年草が約73%を占めていた。これらの確認種は, 客土用土壌に種子 · 植物体が含まれていたと考えられるものが多い一方, 植栽植物の根鉢等も重要な侵入経路となることが示唆された。また, 屋上ビオトープに野草類を積極的に導入できるよう設置した“エコパッチ”には, 小規模な範囲でありながら非常に多くの種の生育が確認された。毎月の調査により早春季~秋季の開花 · 結実の消長の状況が把握され, 居住者等を対象とした季節毎の活用プログラム(観賞 · 観察会等)への反映が可能となった。