日本緑化工学会誌
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切土法面における厚層基材吹付工(斜面樹林化工法)による木本植物群落の造成事例
吉田 寛古田 智昭
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2004 年 29 巻 4 号 p. 482-494

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抄録

本報告では,切土法面における「自然回復, 復元緑化工」を計画する場合に,その初期緑化目標となる自生種を主体とする木本植物群落の造成事例として,厚層基材吹付工(斜面樹林化工法)施工後数年以上が経過した三重県内における試験施工を中心に,1)常緑広葉樹林の形成事例(4 件),2)落葉広葉樹林の形成事例(3 件),3)常緑樹, 落葉樹混交林の形成事例(3 件)について追跡調査結果のとりまとめを行った。植生の経年変化を総合すると,自生種を主体とする木本植物種子を使用した厚層基材吹付工により,施工後数年で複層構造の木本植物群落を形成させることができ,補全種として導入したヤマハギやコマツナギなどの先駆樹種は,主構成種の遷移中後期樹種の成長に伴って衰退していくことが確認された。厚層基材吹付工を適用した場合,一般的に一次植生が持続して植生回復が停滞する傾向があると評価されているが,その主な原因として,これまでの緑化工で行われてきた外来草本類やマメ科低木類を主体とする単一な植物群落形成が大きく関与していると思われる。使用植物を自生種主体に転換することにより,厚層基材吹付工による法面の自然回復緑化は十分可能と考えられる。

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© 2004 日本緑化工学会
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