切土のり面において森林表土を利用した緑化工法で成立する植物群落に関して調べた。埋土種子密度が35.4 個/ L の表土を用いて,南西向き,勾配66°の切土のり面を対象に,植生基材吹付工を併用して緑化施工した。基材に対する表土の混合割合を10%,20%,30% に設定して各試験区を設けた。いずれの試験区でも施工後に多くの出現種を記録し,施工後3 年目の被覆率は50% 程度を記録した。このことから,表土の混合割合を10% に設定した場合でも緑化は可能であり,混合割合を20 - 30% に設定することで,より早期の被覆と,より多くの木本の生育が期待できることが明らかとなった。しかし,既存の盛土のり面における成果と比べると劣っており,また,周囲の植生から木本の侵入は少なかったことから,これらの点で工法に改良の余地があると考えられた。さらに本研究では,表土を採取した森林の林床植生の回復状況についても検証した。採取前と人力による採取後3 年目の林床植生の出現種数と各種の被度を測定した結果,表土採取後に種数は増加し,被度の合計値も増加していた。このことから,表層5 cm程度の土壌を採取することでは林床植生に問題となるほどの悪影響を与えることはないと考えられた。