日本緑化工学会誌
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特集「緑化工施工後一定期間経過後の事例とモニタリング手法」(IV),林道周辺における植生と鳥類相との関係
荒瀬 輝夫内田 泰三
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2005 年 31 巻 2 号 p. 219-229

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抄録

緑化の行われない林道周辺における植生の変化を把握するため,施工後年数と立地条件を要因に取り上げて植生解析を行った。実験計画は施工後年数 (36年,11年),林道上空の植生の開度 (開,閉),工法 (切土,盛土) の3要因の三元配置とし,それぞれ2反復 (計16区),2×5mの調査区を設けた。調査地は信州大学手良沢山演習林とした。木本類は主に動物散布型種子の灌木類で,施工後36年区で11年区より種数が増加していた。草本種数と植被率は開度の大きい調査区で増加する傾向にあったが,植生は概して疎らであった。次に,林道周辺の植生の評価に,植生だけでなく鳥類相の視点を加えることを検討するため,植生の開度,植生の空間構造,鳥類の移動の記述を加えたラインセンサスで鳥類を調査した。異なる森林環境の比較のため,手良沢山の他に大河川の河畔~亜高山帯の5調査地を加えた。鳥類種数は植生の開度に沿って変化しており,種数が最大となる植生の開度は調査地により異なっていた。また,観測時に目立った移動をする鳥類は,通年ふつうに見られる留鳥にほぼ限定されており,鳥類の生息が樹木や草本の有無に影響されていない調査地ほど,移動が多く観測された。

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© 2005 日本緑化工学会
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