抄録
緑地や植物など緑の保有する機能の中で,近年,心身の健康に対する療法的効果や福祉的効果が注目されている。しかし,現在,緑と健康に関する研究に関しては,まだまだ研究データが少ないことや医学的エビデンスの積み重ねが弱いことから研究分野としての確立が十分であるとは言えない。また人の健康を扱うことから,正しい情報と知識の元に研究を進めることが重要である。そこで,緑を扱う学会として,緑と健康に関する正しい情報や知識を共有し,得られた知見を広く一般に発信することを目的として,2006 年度の緑化工学会大会から緑と人の健康に関する研究集会を開催してきた。2006年9月16日(土)に明治大学駿河台学舎アカデミーコモンにおいて「“ 緑の癒し”効果―緑化分野における課題と展望」と題し,ゼネコン,自治体,大学の産官学からの立場からの話題提供をお願いし,活発な議論がなされた(写真)。会場からの質問も多く,緑化分野での注目が高いことを実感した。その様な中,前学会長の森本幸裕先生からのご支援もあり,2007 年度から正式に研究部会として立ち上げることとなった。緑と健康に関する研究に取り組んでいる若手研究者である飯島健太郎先生,今西純一先生,山本聡先生の協力を得,研究部会として2007年度の緑化工学会大会において研究集会を開催した。今回の特集は,京都大学時計台記念館において開催された研究集会「緑化分野における『人の健康と緑』という新しい研究領域」において発表して頂いた先生方に,発表内容を中心に原稿の作成を依頼し,まとめたものである。まだまだ始まったばかりの新しい分野ではあるが,このような視点からの研究も今後の緑化工学の発展のためには必要不可欠な研究領域であると考えている。学会員の皆様の研究や事業に対し有用な情報を提供できるよう,今後も部会運営を進めていく所存である。