柏市のこんぶくろ池周辺に生育しているズミ集団の遺伝的劣化が懸念されているが,その実態究明と保全方法の検討のために,こんぶくろ池を含む関東地域7集団の遺伝的構造と花の形態変異を調べた。アロザイム分析の結果,全集団のヘテロ接合度期待値は0.22と双子葉植物としては高い値を示したが,こんぶくろ池ズミ集団のそれは0.247でもっとも高かった。遺伝的距離より作成した系統図からは,こんぶくろ池集団は東関東グループに属すると考えられた。しかし,花の形態は,アロザイム分析より得られた地理的グループにとらわれない独特な特徴を持っていた。これらのことから,こんぶくろ池ズミ集団の遺伝的劣化は起きておらず,個体群再生のためには,他地域集団からの移植によらず当地自生集団より苗木を育成することが適当といえる。