日本緑化工学会誌
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論文
湿潤な切土法面における外来緑化草本と先駆樹種を用いた播種工の成果比較
細木 大輔中村 勝衛亀山 章
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2008 年 34 巻 2 号 p. 384-394

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抄録

本研究では,植生基材吹付工と植生マット工の施工後の植生遷移と外来緑化草本の消長について施工後8 年間調査を行って把握した。湿潤な岩盤切土法面において,初期緑化目標を低木林群落に設定し,外来緑化草本,在来緑化草本,在来緑化木本の種子を配合して緑化施工した。植生基材吹付工の試験区は,吹付厚を1cm,3cm,5cm に設定した。試験に供した法面では,植生遷移が起こるのに必要なシードレインが確認された。被覆率の結果から,吹付3cm 区および5cm 区では施工当年において良好に緑化がなされたと判断され,吹付1 cm 区とマット1 区は施工後3 年目には緑化がなされたと判断された。吹付3cm 区以外では,3 年目には導入した先駆性木本類が優占して低木層を形成したことから,初期緑化目標が達成されたと判断された。施工後5 年目に在来緑化木本の除伐を行った後の8 年目の時点では,吹付1cm 区とマット1 区では外来緑化草本は消滅したが,吹付3cm 区と5cm 区ではクリーピングレッドフェスク(Festuca rubra Linn.)が比較的高い被度で出現しており,吹付5cm 区では同種の被度が12.0% であった。本研究の結果からは,施工当年の被覆率の成績だけを見た場合には,植生基材吹付工の厚さ3cm と5cm の試験区が,導入した外来緑化草本が良好に生育しており良い成績であったが,緑化目標の達成と外来緑化草本の消滅について考えた場合,植生基材を薄く吹いた吹付1cm 区と,植生基材を使用しないマット1 区において成績が良かったと結論づけられた。

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