日本緑化工学会誌
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論文
京都市大文字山におけるアカマツ実生の定着と成長に及ぼす地表処理効果
呉 初平安藤 信
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2008 年 34 巻 4 号 p. 623-630

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抄録

広葉樹の除伐と林床の落葉落枝(L層) を除去する作業が行われた京都市大文字山のマツ枯れ被害林において,1m2 の処理1 区(A0 層すべてを除去) ,処理2 区(A0 層除去後に50 cm 幅の2 段の水平階段造成) ,対照区の3 つの試験区からなる調査区を5 つ設置し,アカマツの播種試験を行った。その後,4 年間追跡調査を行い,実生の定着と成長に及ぼす地表処理の効果を検討した。その結果,2 年目までは処理区間では有意差がみられなかったが,2 つの処理区では対照区より実生の発生率,生残率,成長量がいずれも大きくTR 比が小さかった。これは,A0 層の除去によって根の鉱質土壌への到達が促進され,乾燥や菌による枯死率が低下するとともに,根系の発達が容易であったためと考えられた。一方,4 年目には対照区とシダ植物(ウラジロ) の旺盛な成長がみられた処理2 区では下層植生の回復が著しく,処理1 区と比較して実生の成長量が大幅に低下した。これは,繁茂した下層植生によって実生が被陰され,その成長が抑制されたためと考えられた。以上のことから,施業後4 年間の初期段階においてはA0 層の除去はアカマツ実生の更新を促進させるが,階段の造成は,下層植生の回復を促し,アカマツ実生の成長を抑制する可能性があることが示唆された。

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