2010 年 36 巻 3 号 p. 381-382
優れた環境指標生物である蘚苔類は,都市の生物多様性を評価するための有効な指標になると考えられるが,実際の研究例については乏しい。そこで,蘚苔類指標を用いた都市の生物多様性評価の可能性を検討した。その結果,蘚苔類指標は緑地の孤立化等に伴う乾燥化や,微小空間の多様性の評価に有効であると考えられた。しかしその一方で,評価対象とする環境以外の要因の影響を受ける蘚苔類指標の問題点も指摘された。以上のように利点・欠点がある蘚苔類指標であるが,他の指標や物理的な計測・観測とあわせて利用することで,都市の生物多様性政策の目標設定・達成度確認への活用や,モニタリング活動に資する効果的な評価手法となると期待される。