2011 年 37 巻 1 号 p. 38-43
近畿地方の市街地 164 箇所の人為的ハビタット(石垣,壁,建物間の隙間,路傍)におけるシダ類の種組成と気候条件との関係を,CCA (正準対応分析), TWINSPAN (二元指標種分析),指標種分析を用いて調査した。CCA の第1軸スコアは暖かさの指数や寒さの指数とよく対応し,気温変化の軸と考えられた。第2軸スコアは乾湿計数や冬季降水量とよく対応し,空中湿度などの乾湿に関する変化の軸と考えられた。TWINSPAN によってシダ類群集は4区分され,それぞれイヌワラビ型,イノモトソウ型,イヌケホシダ型,イシカグマ型と判断された。また,イヌワラビ型,イノモトソウ型,イヌケホシダ型,イシカグマ型の順に温かさの指数や平均気温は大きくなり,イシカグマ型,イヌワラビ型,イノモトソウ型,イヌケホシダ型の順に乾湿係数や降水量はより小さく,乾燥が厳しくなった。今後,このような群集タイプの変化に着目することで,気候変動の目安となる可能性があると考えられた。