2011 年 37 巻 4 号 p. 455-459
ユーラシア大陸の中央部には,モンゴルから中国の西北部,中央アジア,西アジア,さらにはアラビア半島を経て,アフリカ大陸北部へとつながる広大な乾燥・半乾燥地域が広がっている。その中央に位置する中央アジアの人間と環境の相互作用の歴史を,資源利用,生業の変遷という観点から明らかにすることを目的としたのが,地球研イリプロジェクトである。中央アジアの多様でかつ変動する生態系に,人々は遊牧を主体としながらも農耕との複合的な生業と,「移動」を適応の手段としてきた。20 世紀以降の「近代化」の受容の過程で社会は大きく変容し,社会主義的計画経済下で様々な環境問題が生じた。