抄録
中国黄土高原や内蒙古の乾燥地域では,強風の影響を抑え,砂の堆積や流動,地上面の風食を防ぐことを目的としてPopulus 属を用いた防風林造成が進められている。植栽に用いられるPopulus 属の中でも,小葉楊 (Populus simonii) は埋砂により成長が促進される有用樹種と考えられている。本研究は,砂移動が小葉楊の水利用・成長に及ぼす影響の定量的評価をめざし,内蒙古クブチ砂漠において埋砂の影響を受けている砂丘斜面上と埋砂の影響のない平坦地の小葉楊個体群の間で水利用特性及び成長量を比較した。両地点で樹液流速は同程度であり,飽差に対する応答にも顕著な違いは見られなかった。しかし,個葉スケールでは気孔コンダクタンス,蒸散速度ともに斜面上で小さく,水利用効率が高いことからより乾燥に対応していると考えられた。単木の樹液流量は斜面上の個体群で大きく,個体サイズが反映されていた。