本論では,房総半島の南東部に位置する東京大学千葉演習林の清澄地区を対象に,ニホンジカの生息密度,ニホンジカによるスギ,ヒノキ植栽木の被害,被害に伴う枯死および樹高成長の関係について考察した。スギ植栽木の被害率は0%から100% まで広く分布していたが,ヒノキ植栽木の被害率は約60% 以上と約10% 以下に偏って分布していた。被害率が高かった調査区 (4 年目以降で累積被害率が300% を超える) における累積枯死率は,スギの場合,植栽後5 年目まで上昇したが,ヒノキの場合,1 調査区を除いて低いままであった。被害率が高かった調査区における樹高成長は,被害率の低かった調査区 (3 年目以降で累積被害率が200% 以下) に比べて,スギでは半分程度で推移し食害を受けうる高さを超える樹高に達すると期待されたが,ヒノキの場合は樹高成長のほぼ止まった箇所も見られた。