2014 年 40 巻 2 号 p. 340-342
ニセアカシア人工林において実生発生を許容する環境要因を明らかにし,人工林管理へ応用することを目的とした現地調査,野外播種実験,恒温器での発芽実験を行った。実生発生がほとんど見られないニセアカシア人工林内と,多くの実生が発生する林縁とで,対比的な環境要因 (光環境と A0層の厚さ) に着目した。実験に用いた種子はすべて休眠種子だった。野外調査および野外実験の結果,リターと混在していると発芽しないこと,リターがない場合はより明るい環境で発芽率が高くなることが明らかになった。発芽実験では光発芽性は認められなかったことから,光の強度ではなく,十分な変温環境に晒されることで,発芽率が高くなることが示唆された。埋土種子が蓄積している高齢のニセアカシア人工林では,上木の伐採に伴う枝条や伐採木の搬出などで地表攪乱を伴わないような注意が必要である。また,急傾斜地の源流部など林床にリターが蓄積しにくい環境では,下流域への流水散布に注意する必要がある。