抄録
ユーラシアの乾燥地域が原産のタマリスク(Tamarix spp.)は,北米大陸の乾燥地河畔林における代表的な侵略的木本外来種の一つであり,特に米国西部の主要河川沿いに大面積の単純林を形成している。こうした状況においてタマリスクは,河畔林生態系の生物多様性を低下させ,土壌の特性や微生物に影響を与えているとされる。近年,タマリスクの生物学的防除のためにタマリスクビートル(Diorhabda spp.)が原産地から導入され,この昆虫の食害によってタマリスク林で早期落葉現象が見られるようになっている。早期落葉の影響はタマリスク個体の成長量の低下に反映されると言われる。また成長期の落葉はタマリスク林の林床の光環境を改善することで,下層植生定着の促進が期待される。その一方で,落葉の季節性や年間落葉量が変化することで土壌環境に影響を与えるという指摘があるが,これに伴い予測される河畔林生態系の養分循環の変化が植生の変化にどのような影響を及ぼすのかは不明である。これを踏まえて,今後どのように在来植生の回復を実現するのかが重要な課題となっている。