ハリエンジュは日本に導入されてから,山地砂防,海岸林や鉱山煙害地の緑化を目的として植栽されてきた。近年,これらのハリエンジュは河川流域を中心に分布を広げ,河川生態系に大きな影響を与えている。ハリエンジュの分布拡大には生活史特性が大きく関わっている。種子には休眠種子と散布後すぐに発芽できる非休眠種子がある。上流域のハリエンジュから散布された種子は洪水によって中下流域に散布され,新たに出現した河川の砂礫地で発芽し定着する。一旦定着したハリエンジュの実生の生長速度は早く,数年で開花結実する。この速い生長速度は高い光合成能力に依存している。ハリエンジュの実生は急速に伸長した水平根から根萌芽を発生させ分布を拡大している。このように,日本に導入されたハリエンジュは,その特異的な生活史特性によって急速に河川流域に分布を拡大してきた。