日本緑化工学会誌
Online ISSN : 1884-3670
Print ISSN : 0916-7439
ISSN-L : 0916-7439
特集
特集「外来種と植生管理」 北米大陸におけるアジア由来の侵略的木本外来種・ナンキンハゼの現状
岩永 史子崎尾 均山本 福壽
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 40 巻 3 号 p. 479-484

詳細
抄録

ナンキンハゼ (Triadica sebifera (L.) Small) は中国中南部原産の落葉高木で,アメリカ東南部の湿地林・低地林で分布域拡大が著しい。本種の導入は 1900年代初期に始まり,蝋や脂質の生産や用材としての利用を目的として行われた。アメリカ東南部低地域は 18世紀後半からの人為的な環境改変や経済活動の影響を受けて,森林面積の減少や劣化が顕著である。近年のナンキンハゼを中心とした外来種の分布拡大が,土壌改変や在来植物の生育阻害をもたらし,在来生態系と景観の保全を妨げる要因になるとして管理の対象となっている。ナンキンハゼは生育適地が幅広く,高い繁殖力と旺盛な成長により単一群落を形成する。除草剤や,伐採による管理が困難なことから,侵入初期に駆除することが重要とされる。主要な分布制限要因は低温とされるが,将来的な気候変動の影響を受けて,ナンキンハゼの分布域が拡大することが危惧されている。本総説では,アメリカ東南部で行われている外来種管理について,ナンキンハゼの生育特性の概説と併せて紹介する。また,東南部低地林におけるナンキンハゼの分布域拡大に寄与する生態的特性や,低湿地特有の環境要因とナンキンハゼのストレス耐性特性について,センダンとの比較を通じて紹介する。

著者関連情報
© 日本緑化工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top