日本緑化工学会誌
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論文
播種工と自然配植技術による植栽工が 20年間で形成する群落構造の違い
嶌田 知帆長島 啓子榊原 奈々高田 研一田中 和博
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2015 年 40 巻 4 号 p. 547-554

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抄録

岐阜県高山市あかんだな駐車場道路法面では約 20年前に先駆種,遷移中期種,遷移後期種の混植を用いた通称自然配植技術と,播種工の 2種類の緑化工法が導入された。本研究では両緑化工法区における林床植生を含む群落構造の違いを把握することを目的とした。前者にはイチイ,シラカンバ,ダケカンバ,タニウツギ,ナナカマド,ミズナラの 6種が植栽された。後者にはイタチハギ,カヤ,メドハギ,ヤマハンノキ,オーチャードグラス,チモシー,ヨモギが吹き付けられた。隣接するそれぞれの法面にプロットを前者に 4つ(10 m × 10 m:3つ,20 m × 10 m:1つ),後者に 4つ( 10 m × 10 m:4つ)設置し,現地調査を 2012年 9月と 2013年 6月から 8月にかけて行った。比較の結果,自然配植技術が導入された法面では植栽木を中心とした階層構造が形成され,実生の個体数は 1,606個体と有意に多かった。一方,播種工が導入された法面はヤマハンノキ以外の導入種は消失し,ヤマハンノキの一斉林が形成されており,実生の個体数は 30個体とわずかに確認されたのみであった。以上より,遷移段階の異なる樹木を混植することで,播種工と比べ林床植生を含む群落構造が発達した森林が継続的に維持されると考えられた。

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