抄録
2011年 7月に発生した「平成 23年 7月新潟・福島豪雨」によって,福島県伊南川に分布するヤナギ類を優占種とする河畔林に大きな被害が発生した。また,伊南川流域の多くの山腹が崩壊し,倒木が河川に流れこんだ。本研究ではこの洪水がヤナギ類を優占種とする河畔林に与えた影響,及び河畔林の流木捕捉機能を明らかにすることを目的とした。ヤナギ類が優占する伊南川の中州に調査区を設定し,洪水によって被害を受けた樹木と残存した立木の状況を明らかにするとともに,河畔林が捕捉した流木量を測定した。その結果,流路に近い比高の低い部分に分布していたヤナギ林が倒伏などの影響を受けるとともに,林床には砂礫などの新しい堆積物や残存していた立木によって捕捉された上流から流れてきた流木の分布が確認された。これまで河川管理において,堤外の立木は流木の原因になるとして除去されてきたが,今回の大規模な洪水では,河畔林のヤナギ類の立木が,その 2倍以上の材積を持つ上流域から流れてきた流木を捕捉するという効果を発揮した。