抄録
法面緑化工 (客土種子吹付工) を想定して作製された土供試体の一面せん断試験を実施し,クリーピングレッドフェスク (Festuca rubra L.) およびクサヨシ (Phalaris arundinacea L.) の根系を含む土供試体のせん断特性と覆土厚との関係を考察した。土供試体内に草本植物の根系を含むことにより,強度定数のうち粘着力 cのみが増大し,せん断抵抗角 φ に差はみられなかった。また,覆土厚が薄いほど粘着力 c は大きい傾向を示した。2種類の草本植物を比較すると,覆土厚にかかわらずクサヨシにおける粘着力 c はつねに大きかった。とりわけ覆土厚が 1.5 cm 以上の場合,クリーピングレッドフェスクにおける粘着力 c は根系を含まない土供試体cblank (1.1 kN/m2) と同程度にまで低下した。根系に着目すると,2種類の草本植物の根長密度は覆土厚との間に負の相関があり,粘着力 c との間には正の相関が認められた。このように,土供試体の粘着力 c は根系の発達状況に影響を受けており,クリーピングレッドフェスクでは覆土厚 1.0 cm 程度が土層の粘着力 c を保持する上で妥当であった。また,地域性種苗のクサヨシは覆土厚にかかわらず生育状況および粘着力 c が良好であり,積雪寒冷地における法面保全の立場から植生工への適用可能性が高いことが示唆された。