2011年3月に発生した東日本大震災以後,西南日本における南海トラフに関連した地震と津波に対する対策が急務となり,静岡県では平成25年以後,ふじのくに森の防潮堤づくりに取り組んできた。一方,浜松市沿岸域では,CSG工法に基づく防潮堤機能を備えた海岸防災林の造成が進められ,令和3年3月にほぼ完成した。防潮堤の盛土上に植栽された樹木の成長は,様々な要因に影響されるが,本稿では特に,防潮堤周辺の風環境や選定樹種,盛土の物理的特性に着目して,海岸防災林の造成事例を紹介した。防潮堤周辺では海側から吹く風が堤頂を乗り越えて陸側に吹き降りる際に循環流が発生すること,風向きが変わると循環流の大きさが変化すること,植栽木も樹種によって生育状況が異なること,盛土の軟らかさの鉛直分布にはいくつかのパターンがあることを紹介した。今後は,山土や防潮土堤上に海岸防災林を造成するという新たな条件に対応した新たな緑化技術の醸成が期待される。