日本緑化工学会誌
Online ISSN : 1884-3670
Print ISSN : 0916-7439
ISSN-L : 0916-7439
47 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特集「東日本大震災10年―海岸林の復興とその先へ―」
特集「自然環境と健康な街づくり―疫学調査を用いた研究事例紹介―」
論文
  • 大澤 啓志, 小髙 緋奈乃
    2021 年 47 巻 2 号 p. 263-272
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/02/09
    ジャーナル フリー

    仙台湾沿岸の海岸マツ林内に生育していた高木・亜高木層を構成するサクラ類について,津波被災10年後の応答を調査した。計90本を対象に,2020年夏季に樹冠部の樹勢,幹下部の地上5 m以下からの萌芽状況を記録した。多くの主幹で樹冠部の梢端枯れが進行し,全体に主幹の樹勢の衰えが認められた。幹下部からは多数の萌芽枝が確認され,平均23.5本(範囲1~103本)であったが,径2~4 mmの細い萌芽枝が半数(50.2%)を占めていた。萌芽枝数は種間での有意差は認められなかった。径4 mm未満を除いた部位別の発生数を用いて主成分分析を行い,その主成分値でクラスター分析を行った結果,6クラスターを得た。ヤマザクラ(71本)は,上方部位で萌芽枝数が多くなるクラスターに属する主幹が比較的多い(36.7%)ことで特徴付けられた。カスミザクラ(14本)は,全体に萌芽枝数が少ないクラスターに属する主幹が多数を占めた(71.4%)。ウワミズザクラ(5本)は,上方部位の萌芽枝が無いか少数のクラスターに属する主幹が80.0%を占めた。サクラ類はエネルギーの投入を萌芽枝に回すことで個体レベルでの枯死を免れており,今後の海岸林の再形成にはこの萌芽枝が寄与する可能性が示唆された。

  • ウォンスアパタイ チタパ, 高木 康平, 日置 佳之
    2021 年 47 巻 2 号 p. 273-291
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/02/09
    ジャーナル フリー

    ホテイアオイは,多くの場合人為によって新しい環境へ導入され,世界最悪の侵略的外来種の1つとされている。同種は,とくに栄養塩類が集積した環境でたいへん早く繁殖する。自生植物の生息地は密生する同種による侵入を受けると消滅することがある。本研究は同種の急速な増加の要因の解明を,タイ,チェンライ県にあるノン・ボイ・カイ禁漁区において,水域周辺の土地利用/被覆,水質の解析から試みた。また,2つの高度(30m,90m)から撮影したUAV画像を用いて作成した植生図によって同種の分布を明らかにした。その結果,水域における栄養塩類の集積が同種の急増をもたらしたことが示唆された。2009~2018年の間における土地利用/被覆の変化は,農地の急増を示した。高度90mからの正射投影UAV画像は,湖水の13.82%を同種が覆っていることを,また,高度30mの正射投影UAV画像から作成された植生図は,同種が他の自生種を圧倒して生育していることを示した。本研究は,湖周辺の土地利用/被覆の変化が水質の変化をもたらし,それが同種の急増の主要因であることを示唆した。また,異なる撮影高度の正射投影UAV画像はホテイアオイ及びその他の植物の分布の把握に有効であった。

  • 亀井 碧, 中島 敦司, 川中 一博, 山田 守
    2021 年 47 巻 2 号 p. 292-297
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/02/09
    ジャーナル フリー

    ススキ種子の発芽率の向上を目的に種子重量や採取時期に関する発芽実験を行った。種子をHeavy区,Medium区,Light区に分けて5 ℃または25 ℃暗条件下で乾燥させた後,25 ℃12時間明条件下で水を与えた。その結果,Heavy区とMedium区のいずれも最終発芽率は70%以上だったが,Light区は20%と低かった。また,11月~1月採取の種子に同様の温度処理を行った結果,11月種子の最終発芽率は10%以下だったが,12月種子は処理によって60%以上になり1月種子は処理の有無に関わらず50%以上だった。Light区に相当する種子の割合は11月で95%を占めたが,12月や1月では30%程度だった。よって,種子の採取適期は12月以降で,軽い種子を取り除くと発芽率が向上する可能性が考えられた。

  • 浅井 志穂, 豊田 正博, 林 まゆみ
    2021 年 47 巻 2 号 p. 298-303
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/02/09
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,密を避け,アフターコロナでも活用できる在宅園芸療法プログラムを実施し,その心理的効果を検証することである。4種類の在宅園芸キットを用意し,3週間毎に各キットを送付した。参加者は,キットを作製し,オンラインミーティングに参加した。キット作製やオンラインミーティング前後の気分を,POMS2を使って評価した結果,TMD(総合的気分状態)得点,疲労-無気力,活気-活力,友好の得点に有意な改善傾向が見られた。本プログラムは一定の心理的効果が得られることが検証された。インターネット環境があれば時間や場所に関係なく,外出が困難な人や遠隔地の人にも在宅園芸療法を提供することができる。

feedback
Top