火入れが行われている草原には既に木本が生育しており,それらの萌芽は遷移の進行に重要な役割を果たす。そこで,毎年火入れが行われている島根県三瓶山麓の火入れ草原においてヤマナラシの萌芽による更新特性を調べた。2 m×2 mの調査区を設定し,ヤマナラシの水平根と根萌芽,焼けた幹や根株からの萌芽の分布を調べた結果,調査区のヤマナラシに当年生実生はなく,全て根萌芽および萌芽であった。長いものは10 m以上の根系で12株が繋がっていた。水平根は地表下1 cm付近に多く,根萌芽を発生させる水平根の太さは3 mmほどであった。前年の萌芽幹が太く多い方が当年の萌芽本数は多かった。また,枯死した根株は生存する根株より水平根が太い傾向があった。毎年の火入れにより地上部が焼失する中で,生産力の高い根株が存続していると考えられた。本調査地のヤマナラシは,細い伸長する水平根から根萌芽を発生させて分布を拡大し,火入れにより地上部が焼失するとその修復のために萌芽を発生させ,ススキ草原の中で存続していた。