日本緑化工学会誌
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LEE ナビ
南九州のヒノキ人工林皆伐後の森林再生に及ぼす前生樹と新規発芽実生の効果
山川 博美
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2023 年 48 巻 3 号 p. 545-546

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抄録

針葉樹人工林皆伐後の自然林再生に対する前生樹の効果を中期的な時間スケール(林冠形成までの12~14年)において明らかにした。針葉樹の伐採時に,前生広葉樹(DBH1 cm以上)を切らずに残す前生樹保残区(保残区)と,すべての前生樹を伐採する前生樹伐採区(伐採区)を設定し,皆伐の1年後および12または14年後に,更新した木本植物の個体密度,種の豊富さ,樹高を調査した。皆伐後12~14年目には,皆伐区で萌芽更新した前生樹も,保残区で切り残した前生樹と同様な高さ分布や階層構造を形成し,両区で階層構造に大きな違いはなかった。また,伐採後に新たに発生した実生(新規実生)の個体数や種の豊富さは,両区の林分形成に寄与していたが,重力分散型の種子を持つ照葉樹林構成種の更新は限定的であった。前生樹広葉樹の保残効果は,皆伐後早期の階層構造の回復に限られ,中期的な時間スケールでは,豊富な前生樹が十分に林内に蓄積され,周囲の種子源が有効に確保される限り,その効果はほとんど消失していた。

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© 2023 日本緑化工学会
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