西日本の太平洋側と瀬戸内海側におけるハマナデシコの開花フェノロジーの変異を調べた。現地調査の結果,瀬戸内海沿岸には6~7月に開花する初夏咲きが,太平洋沿岸には9~10月に開花する秋咲きが分布し,両者の開花期には約3か月の明瞭な差異が認められた。共通圃場試験においてもこの差異が維持されたことから,本形質は遺伝的に固定されていると推察された。開花フェノロジーの変異は夏季における瀬戸内海側の乾燥回避と,太平洋側の多雨環境の利用という,両地域の気候特性に対する適応の結果と考えられる。本種の開花フェノロジーの差異は変化に富む日本の気候によって生じた生活史分化の一例と言えるだろう。