日本緑化工学会誌
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都市近郊コナラ林の構造と動態 (I)
林分構造とコナラの個体群特性
西村 尚之山本 進一千葉 喬三
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1990 年 16 巻 1 号 p. 8-17

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抄録

成熟した都市近郊コナラ (Quercus serrata) 林内に面積0.92haのプロットを設け, 毎木調査 (胸高直径cm) を行い, その構造を調べた。コナラは相対密度43.1%, 相対胸高断面積合計71.5%で調査林分の優占樹種であった。主な樹種の胸高直径分布は正規型, 逆J字型, L字型を示した。低木層ではヒサカキ (Eurya japonica) が優占していた。コナラには複数の萌芽幹からなる萌芽再生個体と単一幹からなる実生個体とがあり, 生存個体の75%が萌芽再生個体で, その幹数の平均は2.0本, 最多は6本であった。萌芽再生個体と実生個体の平均胸高直径はほぼ等しかったが, 平均根元直径は萌芽再生個体で有意に太かった。根元直径階級が大きくなるにつれて1個体あたりの萌芽幹数の多い個体が多くなり, 階級別の最多萌芽幹数も増加した。萌芽幹と単一幹のどちらも胸高直径が大きくなるにつれて樹高に頭打ちがみられた。萌芽幹と単一幹の齢分布は35-40年にモードをもつ類似の分布を示したことから, 本林分は実生と萌芽のほぼ同時発生により成立したものと考えられる。現在, 林内にはコナラの後継樹がほとんどなく, 実生の生残率も低いことから, このコナラ個体群は今後衰退していくものと考えられる。

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